除菌が成功しても、胃がんの発症率は決して0%にはなりません。
除菌後も必ず定期的に検査を受けてください 。
上部消化管内視鏡検査・ピロリ菌について
上部消化管の内視鏡検査について
上部消化管(食道・胃・十二指腸の一部)の内視鏡検査は、先端に超小型の高精細なカメラを内蔵したファイバースコープを鼻(または口)から入れて、のどを通って食道から胃、さらに十二指腸へと挿入します。
消化管内腔の粘膜面を観察し、粘膜に炎症、びらん・潰瘍、ポリープ、腫瘍などができていないかを確認します。その際、疑わしい粘膜所見があれば内視鏡の先端から出した小さな鉗子(かんし:はさんでつまむ道具)で粘膜の一部(ごま粒程度)を採取して病理検査を行うことがあります。病理検査は顕微鏡で細胞や組織を観察して良性か悪性かを判定します。
当院では、鼻からの挿入が可能な太さ5.8mmの細くやわらかな内視鏡を使用しています。内視鏡を鼻から入れることにより、個人差は多少ありますが嘔吐感・のどの圧迫感がほとんどなく苦痛が軽減され、検査中に会話もできて楽に受けていただけるように配慮しています。
経口から希望される方にも、この細い内視鏡を使用します。
ピロリ菌について
- ピロリ菌は、胃粘膜に感染する唯一の細菌です。
- 乳幼児期の胃粘膜の抵抗力が弱い時期に初感染します。
- その後持続して感染することにより胃に慢性の炎症をおこし続けます。
- 慢性胃炎・萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因となる悪玉菌です。
- 感染率は40代で約30%、50代で約40%、60代で約50%です。
ピロリ菌の特徴
正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ菌」といいます。胃の中で唯一生息できるらせん状の細菌です。しっぽを持ち、粘膜上の粘液中を移動することができます。
●どのようにして胃の中に入るのか?
生活環境内、特に家庭内において、免疫力や胃酸分泌の低い乳幼児期に経口感染するとされています。現在の中高年の方では50%以上の感染率とされますが、若年者では生活環境の改善で感染率が低くなっています。
●なぜ胃の中で生きていけるのか?
胃の中は胃酸により強い酸性となっていますが、ピロリ菌は特殊な酵素でアンモニアを作りだして胃酸を中和することにより胃内で長期間生存しつづけることができます。
ピロリ菌による病気の発症
ピロリ菌が出す毒素が胃に慢性の炎症をおこし続けます。(慢性胃炎・萎縮性胃炎)そこに食事の成分や内服した薬(鎮痛剤等)、飲酒や喫煙、ストレス等が複雑にからみ合って、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃過形成ポリープや胃がんなどが発症します。
ピロリ菌と慢性胃炎・胃がんの関係
ピロリ菌は確実な胃がんの発がん物質に認定されています。(WHO 1994年)慢性胃炎の状態で胃粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)が進むと、胃がんになる危険性が次第に増大します。
ピロリ菌を除菌することにより慢性の炎症を治療すれば、胃がんの発生が2分の1ないし3分の1に減少する(ゼロにはなりません)ことが証明されています。その減少効果は、除菌したときの萎縮性胃炎の程度(重度の萎縮性胃炎では効果が低い)によります。また、除菌により胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発をほぼ確実に予防することができます。
ピロリ菌の検査方法
●内視鏡で胃の粘膜をとって調べる方法
1)粘膜を顕微鏡で観察する検査
2)粘膜や粘液を培養する検査
3)ピロリ菌のもつ酵素の反応を検査
●血液・尿、便、吐く息で調べる方法(内視鏡を用いません)
1)血液中のピロリ菌の抗体を検査
2)便に含まれるピロリ菌の痕跡を検査
3)吐く息でピロリ菌の酵素反応を検査
2つの方法を組み合わせて検査することができます。
ピロリ菌の除菌方法
「胃酸を強力におさえる薬」と2種類の「菌を殺す薬」の3剤を同時に1週間飲んで除菌します。
成功率は70~80%程度です。不成功の場合は薬を1剤変更して再度治療することができます。
慢性胃炎・萎縮性胃炎(ピロリ感染胃炎)、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の病名がある方は健康保険が適用されます。
ピロリ菌の除菌に関するご注意
ピロリ菌の除菌治療は胃がんの予防に有効であるとして推奨されています。